Kleine Blätter

Blätterはドイツ語で、Blatt(英語でleaf葉っぱ) の複数形。言葉や、言葉を集めたものという意味にも使われます。演奏会に関することや作品についてなど思いつくままに折に触れて綴っています。

 

《第42回JPTAピアノ・オーディション     20.Feb.2025》

余寒の厳しい季節ですが、まもなく第41回JPTAピアノ・オーディションの全国大会が始まります。昨年秋の全国各地での地区大会を経て、この静かで仄かな春の兆しも見える日々をどのように音を重ねておられるかとコンテスタントの心情を想像しています。今回初めて、私は東海地区大会におけるオーディション審査に携わる機会を頂きました。
 JPTA(日本ピアノ教育連盟)には、ドイツ留学から帰国してまもなく千葉県の自宅で某音大演奏家コースに在籍する学生さんのプライベートレッスンをお引き受けしたり、地方から音大受験を目指す子供たちのレッスンや当時全国展開していた某コンクールの課題曲セミナーを承るなどの機会をいただいており、指導者としての学びを深めたくて入会しました。季節ごとに送られてくる会報誌には、指導者として豊かな経験を得ておられる諸先生方によるオーディション課題曲のアナリーゼが掲載されていて、様式感を軸に丁寧に紐解かれた考察を拝読するたびに今にも音楽が聴こえてきそうな感覚を覚えます。また全国研究大会に海外から招聘された素晴らしいピアニストで教育者でもあられる先生方のセミナーでは、演奏への直接的なアドヴァイスのみならず、あたたかな言葉を用いて受講生を豊かな発想と創造へと導かれることを目の当たりにし、ピアノを弾く以前の人としての生き方にも敬意と興味を抱くこともしばしばでした。

11月17日(日) KAWAI 浜松ブリエにおけるオーディションでは、幼児から中学生までの演奏を聴かせて頂きました。当日もっとも驚いたのは、これから演奏する順番を待つ小さなピアニストたちが同じ空間で他の参加者の音楽を一緒に聴きながら、舞台では落ち着いて堂々と自分の音楽を披露していたことでした。JPTAでは参加者への「講評」をとても大切にしていて、全員の演奏が終わった後も、審査員が講評を書き終わるまでお待ち下さいとのアナウンスがあり、静謐な時間にペンを走らせながら、奏でられた全ての音楽への敬愛が根底にあるように思えてとても満ち足りた意義深い時間を過ごせたことを感謝致しました。

人前で演奏することにはなかなか思うようにいかないこともありますが、時間をかけて一生懸命に取り組むことはこの後の生き方を必ず支えてくれると信じています。言葉に言い表せない密度の濃い時間の中で生まれる美しいハーモニーに身体ごと包まれる時、音楽は人間の思考をはるかに超えた生きる喜びを齎してくれるように思います。音楽のある人生で本当に良かった、と思える若い芽が今日も育まれていきますように、と心から願うばかりです。

《フレデリック・ショパンの軌跡を辿って 03.April,2024》

ブラームス、フォーレに続いて今年はショパンをテーマにプログラムを組んでいます。
ピアノの為の作品に最もその才能を開花させたショパンですが、実はチェロとピアノのための作品をワルシャワ時代の青年期と、最晩年に書いています。 ピアノ・ソナタ第3番よりもさらに後に書かれたチェロ・ソナタは、昨年お聴き頂きましたフォーレの、削ぎ落としていく晩年の書法とは対照的に、旋律が縦横無尽に絡み合い、あらゆる素材が組み込まれた立体構造を持つ作品で、あの晩年の健康状態でまだこれほどのエネルギーを抱える作品が書かれていたのか・・と驚かされます。20歳で出たきり戻ることのなかったショパンの祖国ポーランドへの執着と自らの激動の人生を振り返る俯瞰した眼差しが見えるように感じています。 
プログラムのそれぞれの作品を繋ぐのは今回も歌曲。同郷の詩人たちの書いた詩に感銘したショパンは詩集をピアノの前に置き、親しい者同士の集まりで自ら歌いながらピアノを弾いたそうです。それらが書き留められることがなかった為に現在楽譜として遺されているのはごく僅かですが、その生涯にわたって相当数の歌曲を書き続けていました。
選ばれた詩はまさにショパンの身に起こった出来事を映すかのようなものもあり、マズルカのような故郷独自の舞曲のリズムに乗せたり、ノクターン風に密やかに語ったり、と同時代のシューマンの歌曲とはまた違う美しさがあります。
ショパンに限らず、政治的社会的な抑圧から日常生活の規制もあった時代には、歌うこと、踊ることは生きることそのもので、歌わざるを得ない、踊らざるを得ない、そんな人間らしい衝動に駆られる時がたくさんあったのだろうと想像したりしています。 
ショパンの生涯を追いながらポロネーズからソナタまでをお楽しみ頂けましたら幸いです。

《ガブリエル・フォーレの軌跡を辿って  10.April,2023》

暖かな季節になりました。 

枯れ枝にようやく芽吹いた新芽に注がれる眩しい陽光や、地平線に沈む太陽の照が刻一刻と空の色をえていく瞬間のひとつひとつなど、春の訪れの喜びと共にえられるこの時季だけのやわらかな時の移ろいを、何時にもまして大切に感じられるこの春はフランスの作曲家ガブリエルフォレ(1845-1924)の世界に取り組んでいます。

 フォレは、日本に開の兆しが見え始めた頃に、フランス、ピレネ山脈の麓のパミエに生を受け、その後教会オルガニストを務めながらパリで活躍した作曲家で、哀愁をびたチェロの名曲の数々は、皆もきっと一度は耳にされたことがあるでしょう。

1789年のフランス革命の後に繰り返された内乱戦争によってフランスのみならずロッパ中に波及した激震を経て、1851年に始まった万覧会の開催によって世界から技術と産物が集結し、道の普及に伴う人の移動と情報の達も加速化された時代でした。近代家へと世界が急速な化と成長を遂げつつある中、次第に失われつつあるものの行方をかに見定めつめつつ、70代に至っても、自身の音に新しい音を求めて進化させ、フランス音楽界の次世代を担う人材の育成にも力を注いだフォレの生涯を、チェロとピアノの音を通して皆様とご一辿っていきたいと思います。

 

チェリスト坂源さんとはこれまでショパン、ブラムス、と1人の作曲家に焦点をててソナタと小品をいていただく、という機をご一させて頂きました。

30代半ばというお若さながらおいする度、ご自身の音への弛みない求道精神と志の高さに敬服せずにはいられない素晴らしい音家です。皆さまのご来場をお待ちしております。

 

《ドイツリートの愉しみ シューマン×ハイネ       08,0ktober,2022

今年も4分の3を過ぎ、いつの間にか日脚の短さに驚かされる季節となりました。

この秋はテノール歌手の石川洋人さんからお誘いいただき、ドイツ・リートの愉しみ、と題してハインリヒ・ハイネの詩に作曲したシューマンの歌曲(リート)を集めた音楽会が、東京と静岡で開催されます。

 

恩師フリードリヒ・ヴィーク氏との裁判沙汰にも終止符が打たれ、その一人娘クララとの結婚がようやく許されたのは1840年、その年の内にシューマンは実に120曲以上の歌曲を書き上げました。

ハイネが従姉妹アマーリエに抱いた恋、失恋、追憶、と切なく激しい心の内を、時に辛辣な皮肉も交えながらドイツの美しい自然との対話や人々の営みをも巻き込んで吐露した詩の数々。時にピアノソロの曲よりも繊細で、クララとの愛を映し込んだかのように書かれたシューマンの美しい音楽は、消え入りそうにはかない旋律(歌声)も自らを奮い立たせるように誇り高いハーモニー(ピアノ)も、情景や心情が見えるように自然に、心の奥底深く訴えてきます。

 

いまだコロナ禍から抜け出せない毎日ですが、石川さんの美しい歌声とのコラボレーションを通して、少しでも心を潤していただけるよう、リハーサルを重ねています。ぜひお出かけください。

《リサイタルDer Weg...道vol.3 》15.Oktober,2021

秋深まりゆく今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今年は金木犀の香りに2度包まれるという思いがけない秋の贈り物がありました。自然界から思いも寄らない「生きる厳しさ」を突きつけられたパンデミック、現代に生活する人間の力にも限りがあることを思い知らされる日々ですが、その自然界から私たちは、生きるための計り知れないほど多くの恵みもいただいていることを思い起こすとき、改めて作曲家の遺した作品の根底に脈打つ「尊い生命への畏敬」に気づかされます。

 

昨年秋より日延べしていましたリサイタル Der Weg...道 vol.3を11月に浜松と東京で行います。大切な人への深い思慕・・私が最も心を注いでいるドイツ作品の中からベートーヴェンとシューマンのソナタを演奏いたします。

 

 シリーズDer Weg...道の誕生秘話?については、以下クラシックニュースでご覧ください。